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宗像・鐘崎の風物詩「正月ブリ」販売 「嫁ブリ」風習は時代とともに変化

正月の食卓を彩るブリ。宗像周辺では、ヤズ、ハマチ、ブリと名を変える(写真提供=宗像市水産振興課)

正月の食卓を彩るブリ。宗像周辺では、ヤズ、ハマチ、ブリと名を変える(写真提供=宗像市水産振興課)

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 宗像漁協「鐘の岬活魚センター」(宗像市鐘崎)が、年の瀬を告げる宗像・鐘崎の冬の風物詩「正月ブリ」を予約販売し、今年は約350件の予約を受け付け、そのうち20件が「嫁ブリ」だった。予約は12月19日で締め切った。

鐘の岬活魚センター外観

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 12月20日は、ブリ(鰤)が漢字で魚へんに師(師走=12月)と書くことと、「ブ(2)リ(0=輪)」の語呂合わせから「ブリの日」とされている。宗像周辺ではヤズ、ハマチ、ブリと名前を変える出世魚として知られるブリは、刺し身、あら炊き、雑煮の具など宗像の正月には欠かせない食材として食卓を彩る。

 宗像を含む九州北部地域では、結婚して最初に迎える正月に婿方の実家が嫁方の実家に「いい嫁っぷり(嫁ブリ)です。ありがとうございます」という感謝の気持ちを込めてブリを丸ごと1匹送る「嫁ブリ」という風習がある。一方、北陸地方では、嫁方が婿方に出世を願いブリを送り、婿方が嫁方に半身を返す風習があるという。送り先は違えど縁起物として正月にブリを送り、互いの幸福を願う気持ちは変わらない。

 北九州出身で宗像市水産振興課職員の松本裕大さんは本年度、漁協と関わることが多い同課に配属になったことで「嫁ブリ」の風習を知り、多くの人に風習を広めようと「宗像漁港活魚センター」インスタグラムアカウントで「嫁ブリ」を紹介した。今年結婚し、初めての正月を迎えるという松本さん自身も「嫁ブリ」を予約済み。「風習を知り、一度しかない機会なので送ろうと思った。市役所内には他に2人、『嫁ブリ』を予約した職員がいる」と話す。

 夫婦とも旧玄海町出身という女性は「結婚した年に、鐘崎の義実家から見たことがない大きさの『嫁ブリ』が送られてきた。今も毎年実家にブリを持ってきてくれる」と話すなど、歳暮代わりにブリを送る人もいる。

 同センター職員の江藤千由里さんによると、以前は丸ごと送るのが一般的だったが、近年は「魚がさばけない」「ごみ処理が大変」などの理由で、嫁ブリを予約する客のほとんどが、三枚おろし、真空パック包装を希望するという。「嫁ブリ」の風習を知らない地方などに発送することもあり、同センターでは「初正月」と書いた熨斗(のし)に加え、嫁ブリの説明書も添える。

 江藤さんは「今は予約を受ける際に、丸ごとか三枚おろしか送り先の意向を確認するよう予約客に伝えている。昔の風習なので今は知らない人も多いかもしれないが、時代やニーズに合わせて変化しながらも嫁ブリの風習は続いていく」と話す。

 同センターでは12月28日・29日・30日、ブリのほか、天然トラフク刺し身、アナゴ茶漬け、冷凍アナゴ開き、イカシューマイなどを販売する「年末大売り出し」を行う。嫁ブリ用の包装は対応不可。30日には無料の「ふるまい鍋」を先着200人に用意する。開催時間は8時~14時(30日は12時まで)。

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