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宗像市役所・JAL出向社員が帰任 地域に寄り添い働いた2年間

秘書政策課の砂田さやかさん(左)と都市再生課の大塚彩花さん(右)

提供:宗像市役所 制作:宗像経済新聞編集部

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 2021年4月から宗像市役所に出向していた日本航空社員4名のうち3名が3月31日をもって期間満了となり、帰任することとなりました。

 出向していたのは、福岡空港、大分空港で勤務していたグランドスタッフの皆さん。宗像市役所の秘書政策課、都市再生課、産業政策室に所属し、市役所の職員として2年間勤務してきました。今回は、秘書政策課の砂田さやかさん、都市再生課の大塚彩花さんのお二人に2年間取り組んだ仕事の内容や、出向を終えた現在の心境などについてお話を伺いました。

包括連携協定を結び、人材交流などを行ってきた宗像市と日本航空

 宗像市と日本航空は、2017年4月20日に包括連携協定を締結しました。日本航空にとって、福岡県内の自治体との協定締結は宗像市が初めて。宗像国際環境会議に日本航空が実行委員会として参画したことや、世界遺産となった沖ノ島を機内誌で紹介したことなどが縁となり実現に至りました。この協定締結を皮切りに、宗像市の職員と日本航空の社員が相互に出向するなど人材交流を開始。市営渡船の船内アナウンスを日本航空のグランドスタッフによるアナウンスへリニューアルしたほか、宗像大社には巫女として短期出向、お仕事体験講座の開催、市の魅力を発信するYouTube動画制作など、さまざまな取り組みを通して連携を強化してきました。

日本の良さ、地域の良さを発信するチャンスを自ら掴む

 そんな中、地域事業を盛り上げ、日本の良さ、地域の良さを発信していく新しい部署として日本航空本社に2020年11月、福岡空港支店には2021年2月に「地域事業推進部」が創設されました。人材は社内公募により選抜。同部署に配属された社員らは各自治体などに振り分けられ、自治体職員として同年4月から勤務が始まりました。宗像市役所に出向したグランドスタッフの皆さんも、社内公募を経て選抜された方々です。

―まずは、社内公募に挑戦したきっかけを教えてください。

砂田さん:私は福岡空港でグランドスタッフをしていましたが、5年後、10年後の目標として「空港業務以外にもさまざまな分野で日本航空を盛り上げる人材になりたい」という思いをずっと持ってきました。今回の社内公募は自分で手を上げて「やりたい」と言える初めての機会だったことや、「地域の良さを発信していく」という事業が私にとって興味がある内容だったことから、「このチャンスを逃してはいけない」と応募しました。

大塚さん:私は大分空港で勤務していましたが、新しい部署でこれまでとは違った仕事をしてみたいと思ったことがきっかけです。JALと地域が一から始める事業に私も取り組んでみたいと思いました。

―宗像市役所ではどのような仕事をしていたのでしょうか?

大塚さん:私が配属された都市再生課では、ふれあいバスやコミュニティバス、オンデマンドバス、路線バス、鉄道など、市内の公共交通に関する業務を担当しました。なかでも、着任と同時期に日の里地区で実証運行を開始した、AIを活用した予約型オンデマンドバス「のるーと」は、利用促進に向けて住民説明会を開催したり、利用者の声を反映させられるよう運行計画の見直しを行ってきました。また、宗像市公共交通計画の作成のために、今後の宗像市内の公共交通のあり方を見直し、従来の定時定路線バスと新モビリティであるオンデマンドバス「のるーと」など、地区ごとに適した交通手段を導入するために分析なども行いました。

オンデマンドバス「のるーと」の住民説明会の様子(都市再生課)

―「のるーと」はこの2年間でかなり定着してきたのではないでしょうか?

大塚さん:そうですね、来年度の継続運行も決まっています。「のるーと」と自分は同じ時期に宗像に来た同期のような存在。思い入れもあったので、住民の皆さんにも順調に定着しつつある状況がうれしいです。オンデマンドバスを導入している自治体が珍しいことから「どのように取り組んでいるのか知りたい」と全国の自治体から視察に来られることもありました。他県の自治体の交通担当者向けの研修会にも登壇させていただきました。

―同時期に始まった政策となると、思い入れは強くなりますよね。新たな市民の足として今後、市内の他地域でも運行されることを期待したいです。砂田さんはいかがですか?

砂田さん:私は秘書政策課で定例記者発表などでのメディア対応、宗像国際環境会議の実行委員事務局などを務めました。包括連携協定を結んでいる企業はもちろん、協定を結んでいない企業の窓口になることも。事業の内容によっては他の課につなぐなどパイプ役も担いました。また、もう一人の出向メンバーは産業政策室で道の駅むなかた周辺のにぎわいづくりや食に関するイベントの企画や情報発信などを行ってきました。このほか、福岡市内で宗像フェアも開くなど一次生産者の支援も。農業、水産、商工観光、離島などの横の連携を強め、横断した政策などにも携わりました。

「JAPANプライドポテト宗像焼のり醤油」発売を発表(秘書政策課)

宗像国際環境会議では実行委員事務局の役割を務めた(秘書政策課)

「道の駅むなかた」の賑わいづくりも。昨年秋の「みあれ祭」では3年ぶりに行われた船団パレードの様子を大画面でライブ中継するイベントを開催(産業政策室)

道の駅むなかたで初開催となった「キャンピングカーイベント」の企画・運営を担当(産業政策室)

―皆さんそれぞれ全く違う部署で宗像を盛り上げるために尽力していたのですね。グランドスタッフとは仕事内容も異なっていたと思いますが、着任当初は戸惑ったりしませんでしたか?

砂田さん:グランドスタッフと市役所での仕事の仕方が違いすぎて、戸惑いだらけでした(笑)。思うように役に立つことができず、最初の2カ月は悔し涙を流しながら帰宅することもありました。配属されて2週間で宗像の環境の取り組みについて記事を書く仕事を任されて・・・。過去の資料や記事を見ながら宗像を勉強し必死に書いたのは、今となっては良い思い出です。分からないことだらけでしたが、同じ部署の皆さんが一から丁寧に教えてくれて、人にも恵まれたと感じています。

まちづくりに市民も行政も柔軟。宗像市は新しい政策を始めるのにちょうどいい規模

―宗像市役所の職員として働いて感じた宗像市の印象はいかがですか?

大塚さん:私自身今まで知らなかったことを、業務のなかでたくさん勉強することができたのですが、市をあげてここまでまちづくりに取り組んでいる自治体ってあまりないのではないかと思います。「のるーと」や「ひのさと48」など、他の自治体でもあまりないような新しい取り組みで、まちづくりと交通などあらゆる面から、市民の生活を支えている点が素晴らしいし面白いと思いました。宗像市民の皆さんも、そのような新しい取り組みを積極的に受け入れている印象でした。

砂田さん:そうですね。活発な動きに市民の皆さんも柔軟に対応していると感じます。私自身は宗像の環境保全団体の多さに驚きました。漁業を生業にしている方も多いからか、市民も行政も環境保全への意識が高い。市民と市が協働でまちづくりを進めていくには、宗像市はちょうどいい規模なのかもしれないですね。

解体予定だった日の里団地48号棟を修繕、改装して2021年にオープンした生活利便施設「ひのさと48」。「やってみよう」「使ってみよう」と新しい取り組みに積極的な姿勢を見せる市民の姿が印象的だったという。

「宗像には誇るべき質の良い食材がたくさんある。宗像の『食』をもっと発信していってほしい」と今後への期待も込める(産業政策室)

休日も宗像を満喫。帰任前には社会貢献マラソンにも参加した。

―市外から宗像市役所に通っていた方もいると思いますが、休日も宗像を観光したり、遊んだりしていたのでしょうか?

砂田さん:友達を連れて宗像大社へ行ったり、出向メンバーと大島でBBQを楽しんだりしました。先日も帰任前の記念に皆で「アドベンチャーむなかた」に参加しました。一応マラソン大会ですが、一秒たりとも走りませんでしたけどね(笑)。

*「アドベンチャーむなかた」:宗像の名所巡りや海岸清掃をしながら走る冒険型マラソン。地域のグルメを食べたりやビーチクリーンをすることでポイントが加算され、ゲーム感覚で楽しみながら社会貢献活動もすることができる。

大会に参加した時の様子

ゲーム感覚でビーチクリーンも実施。宗像の環境への意識の高さを改めて実感した

地域の飲食店も積極的に参加している様子を見て、民間の大会ながら主催者の推進力の強さ、気持ちの高さを実感したイベントだった(産業政策室)

―休日も宗像を満喫するなど、すっかり宗像市役所の一員となっている皆さんですが、3月31日付けで宗像市への出向が終了し、グランドスタッフやオフィス業務に戻られます。現在の心境はいかがでしょうか?

大塚さん:出向する前は飛行機に搭乗するお客さまにしか接客してきませんでしたし、入社して5、6年ということもあり、とにかく目の前の業務を覚えることに必死でした。宗像市役所ではこれまでとは全く違う仕事を経験し、視野が広がったと感じていますし、人としても成長することができました。職場に戻ったら、一緒に働く人に影響を与えられる人になれればと思っています。

砂田さん:出向の延長希望を出すほど楽しかったです。企業との窓口となったり、他の課とやり取りをしたりすることも多く、一緒に連携して何かを作り上げていく楽しさを味わうことができました。最初はぎこちなかった企業とのやり取りも関係性が深まるにつれて信頼関係が生まれ、少しずつ自分の意思も出せるようになってきたところだったので、このタイミングでの帰任は残念。今も空港業務以外のところで会社を盛り上げていける人材になりたいという気持ちは変わりません。今度は日本航空側から自治体や企業、大学と連携して新しい事業に取り組んでいけたらと思っています。

―最後に砂田さん、大塚さんと共に日本航空から宗像市役所に出向している人事課の豊内麻衣子さん(今回は帰任せず)と伊豆美沙子宗像市長にもお話を伺いました。

豊内さん:私は、福岡空港の空港オペレーション部の管理職として、日々の安全運航と旅客サービス、また所属のマネジメント業務に携わっていました。その経験をもとに、宗像市では、1年目は経営企画課、2年目は人事課に配属されました。経営企画課では、施政方針を司る部署として市役所内外の方々と関わる仕事をしました。特に印象深かったのは、市内2大学と連携してまちづくりに挑戦する『大学生の力によるまちの課題解決プロジェクト』です。発足初年度ということ、またコロナ禍で活動の場やアルバイトに制限がある学生を支援する他に類を見ないプロジェクトということもあり、試行錯誤しなら進めた事業でしたが、これまでに経験したことのない達成感を得ることができました。
人事課に異動した現在は、民間企業で培った人材育成の経験を活かし、公務員採用試験や職員研修をメインに携わっています。研修では、職員のスキルや仕事に対する意識の向上、またマネジメント力を強化するために、民間企業と一緒に受講する研修を実施しました。
早速、JAL社員との交流研修も計画中で、宗像市とJALの双方の発展につながる新しい取り組みにも挑戦していきます。

私は今回、帰任せず現在配属の人事課で引き続き勤務します。
彼女たちの活躍は、共に働く仲間として受け入れてくださった宗像市の皆さまの懐の広さがなければ成しえませんでした。
帰任する3人が築いてくれた絆は、宗像市とJALの人材交流の礎となり、今後も継続することで本当の意味での企業連携になるのではと感じています。

伊豆美沙子宗像市長:

宗像市では民間企業の皆様といかに効果的に協働の取り組みを進めていくのかが、大きなテーマとなっていました。そのような中、日本航空社員の派遣の話をいただいた際には、民間企業で培った知見やノウハウを生かして、組織にとっても、職員にとっても良い刺激を与えていただけるのではと思いました。また、それぞれが立候補して本市に来ていただいたという事を聞き、一緒に仕事をすることで、その前向きな姿勢や仕事へのモチベーションの持ち方等、職員の人材育成にもつながると考えていました。
実際に、それぞれの配属先で個の特徴を生かしながら、派遣者同士のつながりも生かして、しっかりとご活躍いただき本当に感謝しています。年度途中に個別に面談をした際には、慣れない環境でのお仕事で大変な事も多かったと思いますが、派遣者全員から「ぜひ、引き続き宗像市のために仕事をしたい」と仰っていただき、同じ職場の仲間として、市としても嬉しく思いました。組織全体への良い影響としては、派遣者の皆さんのJALという会社への意識の高さがどこからくるのかについてお話を伺って、市として初めて「エンゲージメント研修」や「チーム力向上研修」を企画し、職員向けに実施することができました。職員の仕事に対する意識や、それぞれの部署でのチームパフォーマンスを高めていくことが、これからの組織にとっていかに重要であるかを気付き、この取り組みは今後も続けていく予定です。
新型コロナウイルス感染症拡大という経験したことのない大変な状況からいただいた機会ではありましたが、振り返ると、経験したことのない濃く強いつながりとなりました。今後も宗像市と日本航空との連携はますます深く強くつながっていくと思います。帰任される皆さんには、一緒に働いた職員として、時としてふらっと故郷に帰るように、宗像市を訪れてくれるとうれしく思います。

宗像市と日本航空の架け橋へ

 宗像にほとんど縁がない中、これまでとは全く違う職場環境、そして経験したことのない仕事内容に戸惑いながらも、宗像市役所職員として「とにかく目の前の仕事に全力で取り組んだ」皆さん。2年間の出向を無事に終えたことへの安堵感や、担当していたプロジェクト、実施中のイベントの途中で帰任することへの心苦しさや悔しさなど、さまざまな思いを胸に本来の業務に戻ることになりますが、今後も宗像市と日本航空の架け橋となり、宗像市の活性化の一助となることを期待したいと思います。日本航空の皆さん本当にお疲れ様でした。

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